クリニックに患者が来ない。開業前にイメージしていた理想の状況とは違い、日々どうしたら患者が集まるのか悩んでいる。どうしたらいいのか。何が間違っているのか。
この答えは以下のYAHOO知恵袋からの回答をみるとみえてくる。
昔は開業したら患者が集まってきたかもしれないが、今はそうではない。もちろん開業後にうまく進むケースもあるが、成功の裏にはたくさんの失敗がある。
自分の理想を求めて、リスクを取り開業を志す事は、同時に社会全体にとって価値のあることでもある。
しかし、良い面だけではなく昭和の時代とは違い、現代は患者が来ないことが当然である事をしっかりと確認することが必要でもある。
本稿ではクリニックをめぐる環境を紹介した上で、患者が来ない状態を改善するためにできることを出来るだけで具板的に、すぐに行動できる内容に落とし込んで紹介していきたい。
何度も読み返して自院の状況を改善する糸口を見つけてほしい。
開業したけどクリニックに患者が来ない当然の理由
いきなりだが、夢も希望もないことから示すことになる。
開業したからといって、患者は来ないし、集まらない。
代表的な理由は以下3が挙げられる。
これから開業を考えているなら、一度立ち止まって、本当に開業が正しい方法なのか再考することをおすすめしたい。
- 診療所の市場は飽和し競争が前提となっている(診療所も人口減少もある)
- よりよい立地等、もはやどこにもない
- ネットの普及により医師免許ではなく医療サービスが重要になってきている
これらに加えて、コロナにより患者候補の受療行動も大きく変化してきていることを加えておく。
診療所の市場自体が飽和し競争が前提となっている
自分の理想とする診療をやるために、ワークライフバランスを整えるために。
様々な理由から開業医を目指すケースがある。昭和であればそれは正解だったかもしれない。しかし今は令和であり、市場も大きく変化している。
今は開業したからと言って自分の求めるゴールへ行ける可能性が限りなく難しい時代になったのだ。
令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告を確認すると、年間8,300もの施設が新規に診療所を始める一方、7,770もの診療所が閉鎖している。
同調査より、人口10万人当たり対施設数の推移を確認しても、施設数は増加を示している事から、今後さらに競争が激化していくことが安易に想像できるだろう。
人口動態やライバル施設の推移を見る限り、新規参入を希望するのであれば圧倒的な強味がなければまず勝ち目はないだろう。
よりよい立地等、もはやどこにもない
開業コンサルをはじめ開業を勧める業者の一部は立地と診療圏のデータを拠り所に開業の勝率を説明するが、果たしてそのような理想の条件などあるのだろうか。
ざっと開業医向けの不動産情報をさらったところで、深堀する価値もない物件ばかりだ。
仮に理想の条件が整っているとして、それが将来にもわたって環境がそのままである保証などどこにもない。
信じられないと思うのであれば、自分の足で候補とされる場所やメディカルモール内の顧客の動線を確認してみたらいい。
できることなら、朝、昼、夜の時間、平日や土日祝日それぞれどういった人の動きなのかを確認すると尚良い。
ここまで時間を使ったところで自信をもって集患できると思える場所はあっただろうか。
ネットの普及により医師免許ではなく医療サービスが重要になってきている
昭和の時代であれば、開業すれば患者は自動的に集まる時代は確かにあった。しかし社会の状況は大きく変わり、医療も他の消費物同様に消費される時代に変化している。
社会の変化の中で特に大きなものといえば、インターネットの普及による体験の視覚化がある。いわゆる口コミがその代表的なものだ。
口コミが来院の理由、上位にあることから、集患対策と言えば口コミを集める事と必ず言われる。
口コミに関する詳しい説明は後述するとして、ここでは口コミが気軽にできるようになったことで、医療のポジションが変化した点を説明したい。
インターネット以前は診療所の情報は人伝いに広がり、当然広がりも小さかった。
したがって診療所の診療内容やサービスの質について情報が広く共有されることは少なく、患者が感じている良し悪しも客観的に比較検討できる環境ではなかった。
そういった情報の寡占がまねく結果、患者が診療所に求めるものは「医師免許を持った人に医療行為をしてもらうこと」で十分だった。
しかし、インターネット後はあちこちで同じような医療行為を受けられることを知ることになり、同じ金額を支払うのであれば、比較検討してより良いサービスを選ぶという行為ができるようになったのである。
つまり、昔は医師免許が医療サービスの質を証明していたが、今は医療サービスそのものによって質を示さなければならない時代となったのである。
良い立地に開業したから患者に来てもらうのではなく、自ら患者を探しに行く
ここまで説明してきた診療所の競争環境激化を踏まえると、開業に際しては、より良い立地の選定や診療圏調査等を十分に進めていくのは当然の事として、開業後の運営についても主体的に計画を用意していくことが重要になる。
計画を作り実行していくための「道しるべ」となるのが、マーケティングだ。
本稿では数あるマーケティングモデルの中からAISASモデルを使って集患に必要な考え方を説明し、次に具体的な施策や改善案を提示していきたい。
自院にとって活用できるものをうまく取り入れながら、または、そのエッセンスを他の業務に応用しながら積極的に集患対策を進めてほしい。
まだ開業していないなら現場を経験することから始めたい
今から開業して事業を軌道に乗せることは非常に難しい。もし、転職や配置転換など開業以外にも自身の目指す道を検討できるのであれば、まずそれを優先すべきだ。
しかし、それでもなお開業を目指したいと考えるのなら、まずは数年程度、クリニックで働いてみてほしい。できることなら先輩や知り合いもいない、縁もゆかりもない環境が望ましい。
なぜなら、実際に開業をするということは、一から自身の持ちうる能力を使って環境を構築していく必要があるからだ。
開業後ある程度の期間を経たクリニックでアルバイトすることで勤務医との違いを目の当たりにすることもできるし、担当しなければならない業務範囲が臨床以外にも数多くあることに気づく。
それらをこなしながら、スタッフをマネージメントし、さらには資金繰りも意識しなければならない。アルバイトを通じてこういった経験を積み上げながら本当に自分が目指す道なのか再度確認もできる。
日々の臨床で時間がないなら、そういった環境を見つけてくれる転職サービスなどを活用するのが良いだろう。
運営で忙しい中、適切な就労先を探すのは非常に難しいため、こちらのニーズをくみ取って就労先を探してくれる転職サービスなどを使って外注にしてしまうのがよいだろう。
クリニックに患者が来ない状態を改善するために、すぐできる事は
患者がこない理由の大半は場所によるものである。しかしそれだけで決まるものでもない。
患者が診療所を決めた理由の多くは場所(交通の便)であるが、それ以外が決定打になっているケースも多数ある。病院に関する統計ではあるが、平成29年受療行動調査(確定数)の概況を確認するとヒントが見つかる。
<病院を選ぶきっかけ上位:外来>
1位 | 医師による紹介 |
2位 | 交通の便が良い |
3位 | 専門性が高い医療を提供している |
4位 | 家族・友人・知人からのすすめ |
開業をしている場合、簡単に場所を変えることなどできない。
しかし、それ以外の方法で集患対策を強化することは可能だ。私たちはマーケティングを武器にして患者が来ない状態を改善していくのだ。
まずはマーケティングモデルについて理解を深め、その後具体的な取組を出来る限り多く事例を交えて紹介していきたい。是非、何度も読み込んで理解を深めてほしい。
AISASモデルと患者の行動モデルから理解する集患の考え方とは
人が何かしらのサービスや物を購入しようとする際に共通する行動をモデル化したものをマーケティングモデルと言う。
ここでは患者がクリニックに来院するまでにどういった行動をするのかAISASモデルを使って整理していきたい。
AISASモデルは、Attention(注意)⇒Interest(興味)⇒Search(検索)⇒Action(行動)⇒Share(共有)の5つの英単語の頭文字から名づけられている。
五つの要素は顧客(患者)の行動に当てはまる。
それぞれは、注意からはじまり興味を持ち、検索によって調査をし、そして行動を起こす。
その結果を口コミという形で他と共有するという顧客行動を示している。このAISASモデルを患者の行動モデルに当てはめたのが以下の図になる。
それぞれの要素に対応する集患対策を行う必要がある。要素を左から右へ移動させていくことによって来院する患者が増え、運営が安定していく。
この表に自院の状況を当てはめることによって、どこの要素を強化すればよいのか整理することができるのだ。
初診患者を増やすといっても、まずは認知を高め存在を知ってもらう必要があるのか、それとも初めての来院を促すイベントや予防注射などの取組を強化する必要があるのか。
自院の状況によって力を入れるポイントは大きく異なるのだ。
AISASモデルと集患対策全般について具体的に紹介している記事があるので、別途参考にしてほしい。
患者がこないクリニックのホームページの特長と改善法
患者アンケートにおける来院のきっかけではWEBを確認してから受診を決めるケースは一定数存在することから、ホームページをはじめとするネット上のコミュニケーションは広報ツールとして欠かせなくなってきている。
もちろん今ではどこのクリニックでもそれなりのホームページを用意している。
しかし、ホームページの運用については少し運用する側と、閲覧する側では求めている内容が異なるケースが多い。
たとえば、クリニックでは疾病名や検査名を紹介するコンテンツを作る傾向があるが、医療について何もわからない患者が疾病名や検査名などで検索をするのだろうか。
例えばCOPDで検索してみると、「他のキーワード」としてユーザーが調べているキーワードが表示される。これらをざっと見ると症状と治療について調べたいユーザーが多いようだ。
自分の症状がCOPDに該当するのか?というニーズが想起される。であれば、症状をそのままキーワードとして検索するところか始めるのではないだろうか。
たとえば、以下のようなキーワードなどが挙げられる。
試しに以下の検索をためしてみてほしい。SEOやユーザーニーズを意識できているクリニックのコンテンツが見つかることに気づく。
<症状として検索されるキーワードの例>
- 熱が40度3日以上続く
- 寝ているときに左足がつってしまう
- 呼吸が浅く、心臓の音が早い
ユーザーがクリニックが運用するホームページに求めているのは、こういった症状に対する何かしらの回答や提案であり、それを詳しく調べるための来院なのだ。
では、具体的に患者が自身の症状をどういった言葉を使って訴えてくるのか知るにはどうするのか?
答えは簡単だ。
日々の診療中に患者から良く聞かれる言葉をリストアップしておけばよいのだ。それらをひとつひとつ回答としてホームページへ掲載していくことによって患者の求めているコンテンツが整っていくのだ。
もちろん、コンテンツ化においては法令順守が必要である点は言うまでもない。
患者が来ないクリニックの設置している看板の例と改善案
限られた広告手段の中で、クリニックの看板広告は実は非常に大切なものだが、その扱いはないがしろにされている。
毎月のコストも発生していることを考えれば、ただ設置するだけではなく如何に工夫すれば目にとまり認知してもらえるのかを意識したい。
看板を設置する際には2つのポイントを意識して検討をすすめてほしい。
- 目視されやすいか
- 認知できる情報か
街の中に設置されている看板は自院のものだけではない。看板以外にも信号や、音など様々な情報があふれているのだ。
こうった環境下で自院の看板に目線が向き、そして内容を認知してもらえるのかを軸に計画を立てる。具体的には3つのステップで施策をすすめていけばよい。
- ステップ1自院の看板を含む周辺の看板をすべてマップに書き出して設置マップを作る
まずは自分のクリニックの看板がどのような状態なのか把握することが大切だ。
そのためには以下の図のように自院の周辺の看板を一つひとつ紙の落とし込む作業をすればよい。
その際、周辺の道路、信号、電柱、消火栓や標識、車や人がどの方向に進んでいるのかわかるようにまとめることがポイントだ。
- ステップ2看板設置マップをチェックする
次に出来上がったマップを詳しく見ながら、効果的に目視されやすい設置になっているかチェックをしていく。
たとえば、視線の方向を意識して考えた時、看板は自然に目に入ってくる角度になっているのか。
歩行者や自転車を運転している人の視点、車に乗っている人の視点を想定して目の高さに対して低すぎないか。もしくは高すぎないか確認する。
<チェックする視点>
- 看板の向き
- 看板の高さ
- デザイン
- ステップ3二秒で認知できる情報量とデザインになっているのか
最後は看板の内容を歩きながら、あるいは車ですれ違ったときなどにどの程度認識できるのかをイメージしてみたい。看板の字体、大きさ、内容などだ。
看板前を通過して目視できる時間はせいぜい2~3秒程度だ。その中でアピールできる情報を絞り、伝えたい内容が認知できそうか確認を繰り返そう。
その際、文字情報よりもイメージで表現できるものはシンボルマークなどを活用するなど情報を記号化する事を検討したい。
そして、看板に人格を宿すためのひと言メッセージは効果的か確認をしよう。看板に人格が宿り語りかけるようになる。
受け手はメッセージの裏にクリニックの人格を感じ取り具体的なイメージとして記憶されやすくなる。
以上の注意点を意識して効果的な看板を設置してほしい。
気づかぬ間に村八分になる要素、クリニックに患者が来なくなる地域との関係構築とは
せっかく地域に根差したクリニックを目指し様々な取組をすすめてきたとしても、たった1回の挨拶をしなかっただけで、そのクリニックの口コミはマイナスなもので埋め尽くされることになる。
以下のような事は地域の関係が悪化する原因としてよく上がるものだ。
- 敷地内の掃除はしていても、敷地外の道や地域の清掃には無関心
- 勤務時間外のスタッフが地域の人とすれ違っても無視したり、乱暴な態度を取る
- 町会や地域の取り決めに従わない。協力的ではない
- 患者さんの出入りや駐車中のエンジン音の騒音
こういった一つひとつの接点を地域の住民はしっかり見ていて、貴院とお付き合いできるかどうか判断されてしまうのだ。
自身が地域の一員としてクリニックを運営していく姿勢を持ち、些細な事でも心づかいを大切にすることを心がけたい。
患者がこないクリニックが必ず取り入れるべき地域交流例と改善法
病気にならなければ認知されないクリニックの存在を如何にして日常に根ざした存在にしていくのか。
患者候補は主体的にクリニックの情報を集める事が無いとしても、自院のターゲットとする診療圏での認知を高めるには様々な取組がある。
たとえば、地域のコミュニティ誌、商店街や自治会報などで疾病予防や健康管理に関するコラムの掲載や内覧会を兼ねた生活習慣予防教室、健康祭りなどがあげられる。
患者を探すために自ら行動できる事は多数あり、患者が来ないなら是非ともすべて挑戦する覚悟で取り組んでほしい。
- 周辺の商店会・老人会への告知
- 周辺企業への告知
- 地域の媒体への寄稿
- 園児健診・産業医等の積極的な受け入れ
患者が来ないからこそ3年は顧客分析を積極的に行い、自院にあった集患戦略を調整していく
患者がまだ少ない時期というのは、自院の方向性を地域ニーズに合わせて変化させやすい時期でもある。
なぜなら、来院患者が少ないことからクリニックの評価もあまり広がらず、方向性を変えてもマイナスの影響が少ないためだ。
自院の患者の年齢、性別、住所、疾病、受診が多い日時等の受診動向を把握・分析しながらどこに力をいれるべきかを適宜変化させていくのだ。
その結果を再度分析しながら地域のニーズを探り自院のポジションをピボットさせていくことで集患の源泉を掘り当てていく。
一般的に3年程度経過するとある程度自院の地域における評価は定まってくる。まだ患者がこない今だからこそ積極的に行動しきたい。
広報活動は質より量。足を使うこと、それも頻度を意識したい
一般的な開業スケジュールでは1か月前から近くの商店街や消防署、交番、地域のコミュニティへ挨拶周りを始めようと推奨するケースを見るが、それだと遅い。
繋がりを作るということは、ただ挨拶をすればいいという事ではない。接触回数を如何に高めることができるのかを念頭に挨拶にいける理由をたくさん用意することが重要だ。
ザイオンスの熟知性と呼ばれるマーケティングの考え方がある。これは顧客が自社製品やサービスなどに広告等で接触する回数が増えれば触れるほど好感度が高まっていくというものだ。
挨拶も一つ接触方法である。大事な事は回数を増やすこと、挨拶も1回すればいいのではなく、何回も接触する方法として挨拶を活用するのだ。
そのためには積極的に理由を作って足を運び挨拶を通じて接触を図ることが重要だ。
自院と患者のコミュニケーションを視覚化して疑似体験を
良い取組をお客様の声として間接的に紹介したり、クレームや指摘に対してしっかり対応する姿勢があることを視覚化できる効果がある。
クリニックと患者との間に丁寧なコミュニケーションがあることも示すことができるため、是非取り入れてほしい。
患者が来ないクリニックがよくやってしまう安易な増患対策の間違いと改善案
患者がこないからと言って、あちこちに転がっている情報をそのまま鵜吞みにしてはいけない。
代表的なものとして、口コミ対策としてGoogleマップに自院を登録する方法があるが、これは良し悪しがある。
確かに口コミは集まりやすくなるかもしれないが、以下3点を理解した上だと、本当に口コミ対策をする必要があるのか疑問になるのだ。
- 匿名による口コミ記載が可能
- 削除ができない(削除の判断は自院にない)
- 人はポジティブなものよりネガティブなことを知りたくて口コミを探す
たとえば匿名によるひぼう中傷があった場合、削除することができない上に、人はそういった情報を積極的に認知する修正があるため一方的に自院の評判がマイナスになってしまう可能性があるのだ。
このように安易に取り組んでしまったがために失敗してしまう代表的な事例として以下2つを紹介したい。
- MEO対策と口コミの本当の意味
- 患者の属性と予約システムの相性
MEO対策の間違い。口コミはネットではなく対面だからこそ意味がある
まずは、患者の受動行動の診療のきっかけを再度見てもらいたい。口コミの項目は正確に読むと「家族・知人・友人の口コミ」とある。
これはネット上に転がっている匿名のだれかが書き込んだ口コミを参考にしているのではなく(もちろん一部はいるだろうが)、家族や友人が話をしていたクリニックに興味を持ったと読みとくのが妥当ではないだろうか。
口コミがポジティブな力を発揮するためには、以下2種類の方法がある。
- 信頼できる紹介者によるもの
- みんなが評価しているもの
信頼できる紹介者とは家族や知人によるもの、それもオフラインによる口コミである。一方のみんなが評価しているものについてはネット上の匿名による口コミを指す。
MEO対策などで紹介されるネットを活用した口コミ対策の多くは「みんなが評価しているもの」として自院を取り上げてもらえるような取組を指していることが多い。簡単なものがgoogleやクリニックの評判を書き込めるWEBサービスがある。
ネット上の口コミ対策を始めるのはこういったサービスを利用すれば簡単にできるが、同時に匿名によるひぼう中傷も受けつけるという事を理解したい。
また、ネット上にはお金を払えばひぼう中傷を書き込むサービスなども転がっているのだ。悪意をもった第三者からの嫌がらせを受けないとは言い切れない。
ネット環境の匿名性や簡易性を踏まえるとMEOをはじめネット上で自院の評価がやり取りされる場を安易に作ることは控えるべきである。ましてや、自院にネット環境のチェック体制が整えないならばやるべきではない。
では、みんなが評価しているものとして口コミを集めるにはどうしたらよいのか?
答えは簡単である。「PR」活動であり、地方コミュニティなどへの寄稿である。メディアへの掲載は言い方を変えればみんなが評価しているものと権威付けされる特徴があることを知っておきたい。
だからこそ、口コミ対策としておすすめできるのはネットで口コミを直接集めるのではなく、様々な発行媒体への寄稿である。メディアの発信がイコール口コミ対策になるのだ。
予約システムは良し悪しがある。自院の状況に合わせて導入を検討すべし
受動行動をみると診療までの待ち時間に対する不満はかなり大きな比率を占めていることがわかる。こういった不満を解消するツールとして以下のような予約システムが広まっている。
- 当日窓口受付
- WEB予約
- 予約枠
- 完全予約
ただし、こういった予約システムはあくまでもツールの1種でしかなく、待ち時間そのものを改善してくれる万能のツールではないことを理解したい。
予約システムを導入する目的は、「自院の状況に即した患者の待ち時間を削減すること」であり、ただたんに予約システムを入れれば完了ということではないのだ。
たとえば、自院の患者属性に高齢者が圧倒的に多い場合、ウェブ予約を導入したところでITリテラシーの影響で患者離れを助長する要因につながる。
一方で時間に限りがある主婦や会社員が多い場合は当日順番待ちで予約システムを運用する場合、時間が読めないことからそのクリニックは嫌煙されることになる。
つまり、自院の患者属性とITリテラシーを考慮した上で適切な予約受付業務を構築することが大事なのだ。
適切な予約受付システムを導入するには、2つ視点を踏まえて検討すればよい。
- 一人の患者にかけたい診療時間がどの程度なのか
- 自院に来院してくる患者の属性(高齢者なのか、主婦、会社員なのか、急性か慢性か)
先生の治療方針と患者の属性に合わせて以下のように整理することができる。それぞれの予約システムの特長を確認しながら、自院向けにカスタマイズしていきたい。
以上のように予約システムを導入するにしても、その目的を見失わずに自院の状況にあった方法を選択したい。
まとめ
「クリニックに患者が来ない」のは当然だ。開業をすれば自動的に患者が集まるのは昭和の話である。今はクリニックも医療サービスも比較検討され消費される時代なのである。
将来の人口動態からも、日本の医療政策からも開業が果たして最適な方法なのか、今一度検討してもらいたい。
しかし、すでに開業した後だとしてもあきらめることはない。私たちはマーケティングを武器に積極的に集患対策を進め、じっくり地域のクリニックとしてのポジションを確立していけばよいのだ。
そのために必要な要素は以下に示した通りだ。
- AISASモデルにおける患者の行動
- 患者が来ない理由とそれぞれの対策案
- 患者が来るクリニックを目指すためのエッセンス
一般的には運営が落ち着くまでは3年程度は必要とされている。焦らず、同時にスピード感をもって対応を進めていきたい。